宮坂木造研究開発室の木造の家づくりガイド
生活の質
住み心地の良い木造の家に 樹齢より永く暮らせるように
昔から続けられてきた造り方に現代の技術をとりいれ
変化し続けるライフスタイルの器となる木造住宅をつくりましょう

木造住宅の構造と選択のポイント−詳細
室内構成(間取り)と軸組構造形式
室内構成と構造形式の関係を右の3つの軸組構造について、下の図にまとめてみます。
<室内構成(間取り)と軸組構造形式の関係>
 では、上の図を確かめるために、それぞれの構造形式がどのような変形にどう耐えるか、その仕組みを比較してみましょう。
各構造形式の変形の特徴
−架構と耐力壁による軸組構造−


「土壁と木の家」「木なりの家」
「芝屋根の家」「シンプルな骨組の家」
 筋交いや面材(構造用合板や石膏ボードなど)を利用した耐力壁によって柱や梁を支える軸組構造は、壁自体が変形するまで大きく変形することはありません。

 これは地震や風の力を壁によって抵抗する構造といえます。後で説明するティンバーフレームのように揺れることで地震や風の力を吸収する構造とは対照的です。

 
ツーバイフォー構法は、柱や梁を用いずに耐力壁と同じ方法で床と屋根をつくる構造形式です。
<耐力壁に起きる3種類の変形>
「木質構造設計ノート」日本建築学会編著を参考に作成
せん断による変形
転倒による変形
曲げによる変形
 耐力壁は文字どおり、変形に強いつくり方ですが、建物の形状に応じて壁を配置する設計方法なので、外壁だけでなく、室内の間仕切り壁も耐力壁にしないと壁の量が足りなくなる場合があります。また、建物形状に対して壁の配置のバランスが悪いと、大きな地震で建物にねじれが生じることもあります。
 耐力壁主体の方法は、部屋ごとに耐力壁を設けられる間取りには向いています。広い部屋がいくつも必要で、間取りの変更を予定している家族構成には、向いているとはいえません。
 したがって、永く住むためには、家族構成の変化やライフスタイルの変更に柔軟に対応できる柱や壁の配置を設計する必要があります。
<壁の配置位置によっておきるねじれ>
−堀立て柱による軸組構造−


「柱立ての空間」
 「堀立て柱」は、大地に根を張って立つ樹と似ています。整然と立つ何本かの樹から枝を取り除いて、樹同士の幹のてっぺんに丸太を横に設けた形が、建物の構造になります。

 この構造形式を用いた場合は、柱が基礎に固定された状態になるので、柱と梁の接合部は、はずれないかぎり、その接合角度は変わってもかまいません。

<柱と梁の接合部のモデル化判定図>

 「柱立ての空間」では、右の図のような接合部を設計しました。

 風や地震の力が加わる時には、梁や桁と太い柱が組み合わさって抵抗して、建物が耐えられる仕組みです。

 この接合方法では建物の変形が、木材同士の、めりこみ範囲内に抑えられるかぎり、柱と梁や桁との接合角度は、安全な状態に保たれます。

 この柱と梁による構造では、室内に壁を設けなくても耐力を保てます。柱の間隔は5m前後が適当です。

 この構造は、柱が太くなるので、柱のまわりに広いスペースがとれる間取りにする必要があります。

−ティンバーフレームによる軸組構造−


「暮らし方が自由な家」
 この構造の特徴は、向かいあう二本の柱の、柱と梁の接合部に「ハ」の字になるように方杖を設けた門形の軸組です。

 「方杖」は「頬杖(ほおずえ)」と同じですから、肘を立てて手で頬とあごを支えてみると、方杖の役割が実感できるとおもいます。

 変形は下の図のようになります
 方杖は梁にかかる重さの一部を柱に伝え、柱と梁を三角形に組み合わせることで、柱と梁の接合部の変形を抑えることが出来ます。この軸組は構造体が変形すると、片方の方杖が柱を押してめりこむので、復元力が働き、揺れることで、建物に加わる力を吸収するようになります。

 
上で説明した耐力壁を建物外周の要所要所に配置することで、構造体の変形量を抑えることができます。

 
ティンバーフレーム構造は、堀立て柱による軸組構造と同じように、室内に耐力壁を設けなくても地震や風に耐えられます。柱の間隔は4〜6mが適当です。
<ティンバーフレームの揺れる姿>